新しい学習指導要領で小学校英語はどう変わる?【新学習指導要領解説2】

新しい学習指導要領で小学校英語はどう変わる?

新しい学習指導要領で教育はどう変わる?』では、新学習指導要領の教科全般の大枠をまとめましたが、新学習指導要領では外国語教育はどのように変わるのでしょうか。

学習時間は3倍、目標語彙数600~700語に。中学の先取りも

外国語活動(3・4年)では35時間/年(週1コマ)、外国語(5・6年)では70時間/年(週2コマ)の授業数があります。5・6年は授業数が倍増し、3・4年は新たに導入されたため、小学生での英語の授業時間は今までの3倍になりました。

授業時間の増加とともに小学5・6年では教科になったため、600~700語に触れる目標語彙数が設けられました。英検レベルでは5級~3級の範囲の単語が扱われます。

これは2020年以前での中学生の目標語彙数1200語(新学習指導要領では1600~1800語に増加)の約半数で、文法も疑問詞、代名詞、動名詞、助動詞、動詞の過去形など今までの中1の内容が含まれるようになります。

小学生には多い語彙数のように感じますが、知識として読み書きを習得しないといけない語彙数ではなくて、「聞く」「話す」などの言語活動も含めて触れる語彙数です。学習指導要領の解説には下記のように説明されています。

外国語学習においては,語彙や文法等の個別の知識がどれだけ身に付いたかに主眼が置かれるのではなく,児童生徒の学びの過程全体を通じて,知識・技能が,実際のコミュニケーションにおいて活用され,思考・判断・表現することを繰り返すことを通じて獲得され,学習内容の理解が深まるなど,資質・能力が相互に関係し合いながら育成されることが必要である。

小学校学習指導要領解説 P64「外国語科導入の趣旨と要点」より

小学校での外国語はコミュニケーション能力の育成を目的として、何ができるようになるか(CAN-DO)を重視したカリキュラムとなったこともあり、語彙数や文法の知識獲得よりも実際のコミュニケーションで活用できることが大事とされています。

先だって導入されていた5・6年生の外国語活動において、小学校での音声中心の活動が中学英語で音声から文字に円滑に接続されていないとの批判があったため、今後は小学校高学年から段階的に文字を「読むこと」「書くこと」を加えて総合的・統計的な学習を行い、中学英語でつまずかないようにすることを重視します。

小学校外国語教育の目標

平成20年版と新版の学習指導要領の『目標』比較

学習指導要領に記載されている目標について、以前の平成20年度版と新しい学習指導要領を比較してみます。平成20年度版では5・6年の外国語活動でしたが、新学習指導要領では外国語活動が3・4年に前倒しされ、5・6年は教科となったため単純比較はできませんが、新しい学習指導要領で何が変わるのか、また外国語活動と外国語(教科)とでの目指すべき目標の違いが分かります。

■平成20年度版(5・6年)※外国語活動
第1目標
外国語を通じて,言語や文化について体験的に理解を深め,積極的にコミュニケーションを図ろうとする態度の育成を図り,外国語の音声や基本的な表現に慣れ親しませながら,コミュニケーション能力の素地を養う。

■新学習指導要領

(1)外国語活動(3・4年)

第1 目標
 外国語によるコミュニケーションにおける見方・考え方を働かせ、外国語による聞くこと、話すことの言語活動を通して、コミュニケーションを図る素地となる資質・能力を次のとおり育成することを目指す。

(2)外国語(5・6年)

第1 目標
 外国語によるコミュニケーションにおける見方・考え方を働かせ、外国語による聞くこと、読むこと、話すこと、書くことの言語活動を通して、コミュニケーションを図る基礎となる資質・能力を次のとおり育成することを目指す。

『旧』平成20年度版と『新』学習指導要領の表記の比較

『積極的にコミュニケーションを図ろうとする態度の育成』
『外国語によるコミュニケーションにおける見方・考え方を働かせ』

『外国語の音声や基本的な表現に慣れ親しませながら』
『外国語による聞くこと、話すことの言語活動』

『コミュニケーション能力の素地を養う』
『コミュニケーションを図る資質・能力を育成する』

旧版では、「体験的に理解」、「図ろうとする態度」、「慣れ親しむ」、「素地を養う」という表現から、新学習指導要領では、「見方・考え方を働かせ」、「言語活動」、「資質・能力を育成」といったより強く断定した表現となっています。

今までは教科化への移行期間だったこともあり、外国語に慣れ親しむ体験的で受動的な活動が中心のカリキュラムでしたが、これからは『主体的で、対話的で、深い学び』の実現に向けてアクティブラーニングの視点に立った授業が求められるようになります。

外国語活動(3・4年)と外国語(5・6年)の具体的な目標の違い

新学習指導要領において、外国語活動(3・4年)と外国語(5・6年)の第一目標の違いは、5・6年生の外国語になって言語活動に「読むこと」と「書くこと」が追加され4技能になること、育成を目指す資質・能力が、コミュニケーションを図る「素地」からコミュニケーションを図る「基礎」と変更になった程度でしたが、具体的な目標でより詳しい解説があります。

具体的な目標外国語活動(3・4年)

(1) 外国語を通して、言語や文化について体験的に理解を深め、日本語と外国語との音声の違い等に気付くとともに、外国語の音声や基本的な表現に慣れ親しむようにする。

(2) 身近で簡単な事柄について、外国語で聞いたり話したりして自分の考えや気持ちなどを伝え合う力の素地を養う。

(3) 外国語を通して、言語やその背景にある文化に対する理解を深め、相手に配慮しながら、主体的に外国語を用いてコミュニケーションを図ろうとする態度を養う。

具体的な目標外国語(5・6年)

(1) 外国語の音声や文字、語彙、表現、文構造、言語の働きなどについて、日本語と外国語との違いに気付き、これらの知識を理解するとともに、読むこと、書くことに慣れ親しみ、聞くこと、読むこと、話すこと、書くことによる実際のコミュニケーションにおいて活用できる基礎的な技能を身に付けるようにする。

(2) コミュニケーションを行う目的や場面、状況などに応じて、身近で簡単な事柄について、聞いたり話したりするとともに、音声で十分に慣れ親しんだ外国語の語彙や基本的な表現を推測しながら読んだり、語順を意識しながら書いたりして、自分の考えや気持ちなどを伝え合うことができる基礎的な力を養う。

(3) 外国語の背景にある文化に対する理解を深め、他者に配慮しながら、主体的に外国語を用いてコミュニケーションを図ろうとする態度を養う。

外国語活動(3・4年)と外国語(5・6年)の具体的な目標の比較

外国語活動(3・4年):言語や文化について体験的に理解を深める。音声の違い等に気付く。外国語の音声や基本的な表現に慣れ親しむ。
外国語(5・6年):音声や文字、語彙、表現、文構造、言語の働きなどの違いに気付き、これらの知識を理解する。実際のコミュニケーションにおいて活用できる基礎的な技能を身に付ける。

3・4年の外国語活動では英語4技能の内の「聞く」「話す」を通して、体験的に理解を深め、音声・基本的な表現に慣れ親しむことを目標とします。5・6年では「聞く」「話す」に加えて、「読む」「書く」の技能も加わり、語彙や文法、英語ならではの表現や日本語との言語的な違いを理解することが求められます。

外国語活動(3・4年):身近で簡単な事柄について、自分の考えや気持ちなどを伝え合う素地を養う
外国語(5・6年):場面や状況に応じて、学んだ英語を活用してコミュニケーションできる基礎的な力を養う

3・4年生では、自分の好きなことや欲しい物、将来の夢などの自己紹介、地域や身近なことを英語で表現することを学び。5・6年生では、世界の国々について学び、日本と諸外国を比較したり、環境や食料など世界的な問題を考えるグーローバルな視野を育みます。

外国語活動(3・4年):『相手に配慮』
外国語(5・6年):『他者に配慮』

3・4年生の外国語活動での『相手』に配慮したコミュニケーションとは、友だちや家族といった身近な人とのペアワークやゲームを想定しています。5・6年生での『他者』に配慮したコミュニケーションとは、地域の人々や外国人留学生など文化や背景が異なる人とも交流を図ることです。

タイトルとURLをコピーしました