小学校英語にも導入「CAN-DOリスト」とは?【新学習指導要領解説3】

「CAN-DOリスト」とは英語で「~することができる」能力や技能の目標

「CAN-DOリスト」とは、英語学習で身につける能力や技能を「~することができる」の形で指標化しリストにしたものです。生徒に求められる英語力を達成するための学習到達目標として能力記述文(ディスクリプタ、can-do descriptors)の形で設定します。

文法や語彙等の知識の習得から、それらを活用して、聞く、話す、読む、書くの4技能をバランス良く身につけ、実際に英語を使う場を想定し、習得した語彙力を駆使して自分の考えを適切に表現しコミュニケーションできる能力や技能を養います。

平成23年6月に文部科学省の「外国語能力の向上に関する検討会」における審議のまとめとして発表された「国際共通語としての英語力向上のための5つの提言と具体的施策」において、学習到達目標を「CAN-DOリスト」の形で具体的に設定することが提言され、既に多くの中学校・高校に導入されています。

新学習指導要領にて小学校の英語教科化に伴い、小学校でも「CAN-DOリスト」の導入が推進されることになりました。これにより小中高を通じて連続した英語教育が実現しやすくなります。

「CAN-DOリスト」は、2001年に欧州評議会(Council of Europe)が発表した「外国語の学習、教授、評価のためのヨーロッパ共通参照枠(Common European Framework of Reference for Languages: Learning, teaching, assessment 頭文字をとってCEFR(セファール)と呼ばれています。)」がもとになっています。CEFRに関連付けることで、世界標準を意識した学習や指導が行いやすくなり、ひいては留学促進につながることが期待されています。

聞く

外国語活動(3・4年)

ア ゆっくりはっきりと話された際に,自分のことや身の回りの物を表す簡単な語句を聞き取るようにする。

イ ゆっくりはっきりと話された際に,身近で簡単な事柄に関する基本的な表現の意味が分かるようにする。

ウ 文字の読み方が発音されるのを聞いた際に,どの文字であるかが分かるようにする。

外国語(5・6年)

ア ゆっくりはっきりと話されれば,自分のことや身近で簡単な事柄について簡単な語句や基本的な表現を聞き取ることができるようにする。

イ ゆっくりはっきりと話されれば,日常生活に関する身近で簡単な事柄について,具体的な情報を聞き取ることができるようにする。

ウ ゆっくりはっきりと話されれば,日常生活に関する身近で簡単な事柄について,短い話の概要を捉えることができるようにする。

「聞く」のCAN-DOリスト
  • 文字の名称の読み方を聞いて、英語の活字体の文字と結びつけることができる。大文字と小文字の区別がつく。
  • 自分の好きな色や食べ物、自分の着ている服、持ち物など、自分の身の回りの物を表す語句を聞き取れる。
  • 日付や時刻、値段などを表す表現など、身近で簡単な事柄に関する基本的な表現の意味が分かる。
  • 学校や家庭での出来事や日常生活で起こる身近で簡単な事柄について、具体的な情報を聞き取れたり、話の概要を捉えられる。
  • 学校の友達や教師、家族など身近な人や身の回りの物に関する簡単な単語や基本的な表現を聞いて、イラストや写真と結びつけることができる。

「ゆっくりはっきりと話されれば」とは、明瞭な音声で聞き取りやすく話されることを前提条件として聞き取るということです。

日常生活での身近な事柄とは、例えば食べることや食べ物、衣類を着ることや衣類、遊ぶことや遊びの道具など日々の生活の中で繰り返す出来事や習慣、具体的な情報とは誕生日や時刻、物の数や値段など日常生活に密接に関係した内容のことを指します。

話すこと[やり取り]

外国語活動(3・4年)

ア 基本的な表現を用いて挨拶,感謝,簡単な指示をしたり,それらに応じたりするようにする。

イ 自分のことや身の回りの物について,動作を交えながら,自分の考えや気持ちなどを,簡単な語句や基本的な表現を用いて伝え合うようにする。

ウ サポートを受けて,自分や相手のこと及び身の回りの物に関する事柄について,簡単な語句や基本的な表現を用いて質問をしたり質問に答えたりするようにする。

外国語(5・6年)

ア 基本的な表現を用いて指示,依頼をしたり,それらに応じたりすることができるようにする。

イ 日常生活に関する身近で簡単な事柄について,自分の考えや気持ちなどを,簡単な語句や基本的な表現を用いて伝え合うことができるようにする。

ウ 自分や相手のこと及び身の回りの物に関する事柄について,簡単な語句や基本的な表現を用いてその場で質問をしたり質問に答えたりして,伝え合うことができるようにする。

「話すこと(やり取り)」のCAN-DOリスト
  • 基本的な表現を用いて、挨拶を交わしたり、感謝を述べ合うことができる。
  • 簡単な指示や依頼ができ、それに応じたり断ったりすることができる。
  • 自分のことや身の回りの物について、動作や表情を交えて、事実だけでなく自分の考えや気持ちを伝えることができる。
  • 日常生活や身近な事柄について伝えることができる。
  • 相手に質問をしたり、質問に答えたりできる。

英語に初めて触れる児童や自己表現することに苦手意識や抵抗感のある児童のために、3・4年生での『サポートを受けて』で、教師やALT、グループやペアの友達とのやり取りの流れの中で、自分の考えも出せるように配慮します。それに対して5・6年生では、自分で質問を考えたり、質問に対して自分で考えて答えたりするなど、その場の相手とのやり取りの中で、自分の力で伝え合うことを目指しています。その先の中学校での簡単な語句や表現を用いて即興で話すことへと繋がります。

話すこと[発表]

外国語活動(3・4年)

ア 身の回りの物について,人前で実物などを見せながら,簡単な語句や基本的な表現を用いて話すようにする。

イ 自分のことについて,人前で実物などを見せながら,簡単な語句や基本的な表現を用いて話すようにする。

ウ 日常生活に関する身近で簡単な事柄について,人前で実物などを見せながら,自分の考えや気持ちなどを,簡単な語句や基本的な表現を用いて話すようにする。

外国語(5・6年)

ア 日常生活に関する身近で簡単な事柄について,簡単な語句や基本的な表現を用いて話すことができるようにする。

イ 自分のことについて,伝えようとする内容を整理した上で,簡単な語句や基本的な表現を用いて話すことができるようにする。

ウ 身近で簡単な事柄について,伝えようとする内容を整理した上で,自分の考えや気持ちなどを,簡単な語句や基本的な表現を用いて話すことができるようにする。

「話すこと(発表)」のCAN-DOリスト
  • 身の回りの物について、実物や写真、イラストを見せながら人前で話すことができる。
  • 自分の興味あること、好き嫌いや欲しい物などを話して自己紹介ができる。
  • 時刻や曜日、場所などの日常生活に関する身近で簡単な事柄について、自分の考えや気持ちを話すことができる。
  • 伝える内容が複数ある時、聞き手に分かりやすく伝わるように内容や順番を整理して話すことができる。
  • 事実の説明と自分の考えや気持ちを整理して話すことができる。

3・4年では、実物や写真、イラストを交えて話すことを推奨しています。これは話し手にとっては話す内容をイメージしやすく、発表内容が明らかになり、聞き手にも分かりやすく情報を伝える助けになります。難しい語句や表現を暗記させて発表させないように配慮が必要です。

5・6年では、例えば自己紹介等で、趣味や得意なことなど、伝えようとする内容が複数ある時、聞き手に分かりやすく伝わるように内容や順番を整理した上で、事実の説明と自分の考えや気持ちを話すことができるようになることが目標となります。

読む

外国語(5・6年)

ア 活字体で書かれた文字を識別し,その読み方を発音することができるようにする。

イ 音声で十分に慣れ親しんだ簡単な語句や基本的な表現の意味が分かるようにする。

「読むこと」のCAN-DOリスト
  • 活字体で書かれた文字を見て、どのアルファベットか、大文字か小文字かを識別できる。
  • 活字体で書かれた文字を見て、その読み方を発音することができる。
  • 日常生活に関する身近な内容の掲示やパンフレットから必要な情報を探し出せる。
  • 中学年の外国語活動の「聞くこと」、「話すこと」で慣れ親しんだ簡単な語句や基本的な表現を、絵本などの中から識別できる。

発音と綴りとの関連付けは中学校で学ぶため、小学校ではフォニックスやチャンツといった活動を通して、音声と文字とを関連付ける指導に留まります。

書く

外国語(5・6年)

ア 大文字,小文字を活字体で書くことができるようにする。また,語順を意識しながら音声で十分に慣れ親しんだ簡単な語句や基本的な表現を書き写すことができるようにする。

イ 自分のことや身近で簡単な事柄について,例文を参考に,音声で十分に慣れ親しんだ簡単な語句や基本的な表現を用いて書くことができるようにする。

「書くこと」のCAN-DOリスト
  • 大文字、小文字を活字体で書くことができる。
  • 大文字と小文字を書き分けながら文章を書くことができる。
  • 語順を意識しながら、語と語の区切りに注意して簡単な語句や表現を書き写すことができる。
  • 例文を参考にして文の一部の語、あるいは自分が表現したい内容に書き換えて書くことができる。
  • 名前や年齢、趣味、好き嫌いなど自分に関する事柄について、例示された語句や文をもとに自己紹介文を書くことができる。
  • 簡単な語句や基本的な表現を用いて、身近な簡単な事柄について自分の考えや気持ちを書くことができる。

アルファベットはAaから順番に覚えるのではなく、「a,c,e」「f,l」「g,y」といった文字の高さの違いを意識する(◯階建て)、「p,q」や「b,d」といった紛らわしい形を意識する、「Cc」「Jj」「Kk」 などの大文字と小文字の形がほぼ同じといった文字の形の特徴を捉えるなど、効果的に覚える工夫が大切です。

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